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大阪高等裁判所 昭和38年(ネ)743号 判決 1968年8月02日

控訴人 岡西武夫

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 西阪幸雄

久留島新司

被控訴人 学校法人頌栄保育学院

右代表者理事 岡崎真一

右訴訟代理人弁護士 中原保

中原康雄

主文

原判決を取り消す。

神戸地方裁判所が同庁昭和三七年(ヨ)第一七号仮処分申請事件について昭和三七年一月一七日にした仮処分決定を取り消す。

被控訴人の仮処分申請を却下する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

一、控訴代理人は、主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、

(一)  本件各控訴を棄却する。ただし、本件仮処分決定添付目録の表示を

「一、従前の土地

神戸市生田区北長狭通六丁目一七番地

宅地 二七〇坪七合一勺のうち

宅地 一〇五坪

二、右仮換地

神戸市生田区中山手工区一四街区六号地

宅地 一〇五坪六合九勺」

と改める。

(二) 控訴費用は控訴人らの負担とする。

との判決を求めた。

二、当事者双方の事実上および法律上の陳述ならびに疎明の関係は、

(一)  被控訴代理人において、

(イ)  被控訴人は、訂正後の物件目録の二の場所を入手する目的で控訴人岡西から土地を買ったものであるが、本件仮処分申請に当たり、右二の土地を特定するため、この場所につき登記簿上表示されているところに従い、仮処分決定添付目録のように、「神戸市生田区中山手通六丁目三五番の四宅地三四坪一合、同所同番の五宅地一〇七坪一合四勺」と掲記したのである。仮処分申請に際しかような方法で目的物件を特定することは、その段階の手続としては正当なものであったと思料する。しかし、実は、右二の場所は、同じく訂正後の物件目録の一の土地の仮換地として指定されており、被控訴人が右二の場所を入手するため控訴人岡西から買った土地は右一の土地にほかならない。この関係を明確にするため物件目録の表示を前記のように訂正するとともに、同控訴人から買った「土地」についての従前の主張を右のように改める。

(ロ)、(ハ) ≪省略≫

(二)  控訴代理人において、

(イ)  前記被控訴人の(イ)の主張に対し、被控訴人が控訴人岡西から買った土地が訂正後の物件目録の一の土地であることおよびその仮換地として同二の土地が指定されていることは認めるが、仮処分決定の物件目録の表示を被控訴人主張のように訂正することには異議がある。本件仮処分は、訂正後の右一の土地に対し処分禁止を命ずべきところ、これとは全然別個の訂正前の物件目録の土地について仮処分決定がされているから、目的物を誤った違法のものである。

(ロ)  ≪省略≫

(三)  疎明≪省略≫

理由

まず、被控訴人の本件仮処分決定添付物件目録の表示の訂正の許否について判断するに、訂正前の土地と訂正後の土地とはまったく別のものであるから、訂正後の土地について処分禁止を求めるには、新たにその趣旨の仮処分を申請するほかはなく、従前の仮処分決定に対する異議訴訟とくにその控訴審において、物件目録の表示を変更するという方法でこの別個の新たな趣旨の仮処分申請に代えることは許すべきでない。この点につき、被控訴人は、訂正後の目録の二の土地は同目録の一の土地の仮換地として指定されたものであるが、右二の土地が場所的には登記簿上訂正前の目録どおり表示されている土地に該当するところから、仮処分申請に際し目的物件特定の方法として右目録のように表示したにすぎず、これはその段階の手続として正当であると主張する。しかし、仮換地の入手を保全するための処分禁止の仮処分に際し、その目的物件たる当該仮換地の場所が現に登記簿上どのように表示されているかを問題とすることは法律上まったく無意味であるから、被控訴人の右主張は採用できない。ちなみに、仮換地たる前記二の土地の従前地である前記一の土地に対する被控訴人主張の被保全権利については、その本案訴訟において被控訴人の請求を棄却する旨の判決が確定しているから(≪証拠表示省略≫)、右一の土地に対する被控訴人の新たな仮処分を認める余地もないというべきである。

以上のように、本件では、訂正前の目録表示の土地についての仮処分申請の当否を判断すべきところ、被控訴人は右土地に対してはなんら権利主張をするものでないから、右仮処分申請は却下するほかはない。

よって、本件仮処分決定を取り消すべく、これを認可した原判決は不当であるから、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 井関照夫 判事 藪田康雄 賀集唱)

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